自動車保険の自賠責保険と任意保険の違い、補償内容をまとめて解説
自動車保険を調べると、自賠責保険、任意保険、車両保険など、いろいろな保険の名称が出てきます。これらの違いはなんでしょうか?自動車保険について勉強したことがないと、答えるのが難しいかもしれません。
任意保険に対して強制保険の自賠責保険が存在しています。通常は、自賠責保険ではカバーしきれない損害を補償するために任意保険にも加入することになります。自動車保険と言うと、自賠責保険ではなく任意保険のことを指すのが一般的です。
では、車両保険とはなんでしょうか?「車両の保険という名前なのだから、自動車保険も車両保険も同じような意味合いなのでは?」と思う人もいるようですが、車両保険とは任意保険を構成している保険のひとつです。自動車保険を構成する要素のひとつですから、車両保険=(イコール)自動車保険ではありません。
自動車保険のことがよくわからないと言う人もいますが、専門用語をただ覚えるだけではなく、このような自動車保険の関係性をまず知ることが大切です。全体像が見えてくれば、複雑と思われがちな自動車保険の理解も容易になります。
自動車保険がわかれば、補償内容を自分に最適なものにカスタマイズできるようになります。その結果、保険料を安くすることができます。勧められるままに自動車保険にただ加入するのではなく、自動車保険を理解して、自分に必要なものだけをしっかりと選んでいきましょう。
自賠責保険は加入義務がある強制保険。未加入の場合は罰則あり
自動車保険は、大きく分けると自賠責保険と任意保険の2種類あります。自賠責保険は強制保険とも言われ、自動車を所有するなら、必ず加入しなければなりません。
自賠責保険は正式には、自動車損害賠償責任保険といいます。自動車損害賠償保障法(自賠法)によって、加入が義務づけられています。自賠法は自動車事故の被害者救済目的で制定されました。
自賠責保険に加入していない自動車は、一般道路を走れないことになっています。自賠責保険に加入せずに車を運行した場合、1年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑に処せられます。
【補償範囲の違い】自賠責保険の補償範囲は限定されている
自賠責保険と任意保険は補償範囲を見ると、はっきりとした違いがあることがわかります。
対人賠償のみ
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つまり、相手方への補償のみ(人に対しての補償のみ。相手の物は含まない)。
自分の人・物に対しての補償はない。
■任意保険の補償範囲
対人賠償保険、対物賠償保険、搭乗者傷害保険、人身傷害補償保険、車両保険など
※契約内容による
↓
つまり、相手方や自分の人・物に対して損害を補償する。補償範囲が幅広い。
自賠責保険の目的は被害者の救済にあります。補償範囲も、相手方の「人」に発生した損害のみを補償するものになっています。そして、補償額には上限があります。
任意保険に入っていない場合、事故を起こすと、自賠責保険の補償範囲を超えた損害はすべて自己負担になります。また、自賠責保険は人身事故のみを補償する保険ですから、自損事故、物損事故などを起こした場合は、保険金は一切支払われません。
任意保険へ加入するしないは自由ですが、自賠責保険の補償だけでは足りないことを考えると、加入する必要があると言えます。
任意保険にはさまざまなサービスがあります。例えば自分が加害者になってしまった場合、相手方(被害者)との示談交渉が必要になってきますが、示談代行サービスが利用できたりします。自賠責保険にはこのようなサービスはありません。
【補償金額の違い】自賠責保険の補償額だけでは不十分
自賠責保険と任意保険の対人賠償について、補償金額を見てみると、その違いがよくわかります。
■自賠責保険の補償額
傷害120万円、後遺障害4,000万円、死亡3,000万円
■任意保険の補償額
無制限 ※契約内容による
人身事故を起こした場合、自賠責保険で受け取ることができる120万円ではカバーしきれません。重度の後遺障害、死亡といった場合、損害賠償額は2億円、3億円以上になることもあります。
任意保険の場合、補償額を無制限に設定することができます。
事故がなければ任意保険は必要ないので、保険料がもったいないように感じる人もいます。しかし、大きな事故を起こしたり、巻き込まれたりした時には、「加入しておけばよかった」では済まされないことになります。お金だけではなく、精神的な余裕もなくなっていきます。事故を起こしてから後悔しないように、損得だけで保険を選ばないようにしたいものです。
【保険料の違い】自賠責保険と任意保険の保険料はいくら?
自賠責保険や任意保険の保険料はいくらなのでしょうか?
自賠責保険の場合、自家用乗用自動車(普通車)、軽自動車といったような車の種類ごとに保険料が設定されます。
2017年の普通車と軽自動車の保険料は次のようになっています。
24ヶ月:25,830円、36ヶ月:35,950円
■軽自動車
24ヶ月:25,070円、36ヶ月:34,820円
一方、任意保険の場合、保険契約期間は通常1年です。任意保険の保険料は、主に次の要素によって決まります。
- 契約車両(車種、グレードなど)
- 契約者(年齢、免許証の色、使用目的など)
- 保険商品(アクサダイレクト、そんぽ24、三井ダイレクト損保など)
契約する条件によって任意保険の保険料は異なりますから、自賠責保険のようにすぐ保険料を把握することができません。しかし、「自動車保険の一括見積もりサービス」を利用することで、自動車保険の相場を簡単に知ることができます。
保険料がいくらになるのか。当サイトでは、保険料の相場に関する記事も掲載しています。見積もりの条件によって保険料は異なってきますが、平均相場として参考にしてみてください。
自動車保険の保険料【平均相場が知りたい】20歳以下・20代・30代・40代・50代など年代別相場のまとめ
任意保険は自分でカスタマイズできる保険です。契約内容に合わせて保険料も安くなったり高くなったりします。
自動車の任意保険とは?
自賠責保険の補償内容を見てきましたが、事故を起こした際、自賠責保険だけでは対応できないことは明らかです。自賠責保険の補償範囲を超えた損害をカバーするなら、任意保険に加入する必要があります。
人身事故、物損事故、自損事故など、幅広い補償を受けることができます。
任意保険は次のように構成されています。
■任意保険を構成する主な補償
対人賠償保険、対物賠償保険
■自分と同乗者の補償
搭乗者傷害保険、自損事故保険、無保険車傷害保険、人身傷害補償保険
■車の補償
車両保険
いろいろな種類の保険がありますが、すべてに加入しなければならないということはありません。
対人賠償保険、対物賠償保険が相手方への補償です。任意保険のベースとも言える補償となっています。この対人賠償と対物賠償を基本として、自分に必要な他の補償を選んでいき、最終的に自分に最適な任意保険にすることになります。
各補償内容については、次のようになっています。
対人賠償保険
自賠責保険を補完するのが、対人賠償保険です。
自賠責保険では、傷害で120万円、後遺症障害で4,000万円、死亡で3,000万円まで補償されています。この限度額を超える損害賠償額に対しては、対人賠償保険で支払っていくことになります。
このような性質があることから、対人賠償保険は自賠責保険の「上積み保険」と呼ばれることもあります。
対物賠償保険
対物賠償保険は対物賠償責任保険とも呼ばれ、事故によって相手方の車や物を壊してしまったときに補償してくれる保険です。
車同士でぶつかったりした際に、壊した物に対して保険金が支払われます。
しかし、コンビニやパチンコ店などの店舗に突っ込んでしまった場合は、お店の修理代や破損してしまった商品だけではなく、休業損害に対する補償もしなければなりません。従業員の給料や本来あるはずの店舗の売上(逸失利益)なども補償しなければなりませんから、補償額は1億円を超えることもあります。
対人賠償保険もそうですが、対物賠償保険の場合も万が一に備えて、補償を無制限にしておきましょう。
人身傷害補償保険
対人賠償保険や対物賠償保険は相手方のケガや物の補償に使われる保険ですが、人身傷害補償保険は、自分や同乗者の補償に使われる保険です。
本人に過失がある場合、保険金は過失割合に応じて減額されるところですが、人身傷害補償保険に入っていると、実際の損害額に対して支払ってもらえます。
しかし、人身傷害補償保険に入っていることで、過失割合に関係なく、実際の損害額を受け取ることができます。
損害額300万円のうち、相手の自動車保険から250万円を受け取れたら、差し引いた残りの金額50万円を自分の保険会社が支払ってくれます。自分の過失が100%でも補償対象になるので、保険金を受け取ることができます。
人身傷害補償保険は補償範囲が広いです。契約車両に乗っているすべての人が補償の対象になります。また、対象者が他の車に乗っているときに起きた事故や歩いているときに起きた事故についても補償範囲としていたりします。
示談が長引いてしまうと、保険金の支払いまで時間がかかることが多いです。しかし、人身傷害補償保険なら、示談が成立する前に保険金を受け取れる場合もあります。
人身傷害補償保険(特約)とは?補償範囲と補償額の目安。いくらに設定すればいいのか
搭乗者傷害保険
搭乗者傷害保険とは、契約車両に乗っている人のケガや死亡を補償する保険です。車に乗っている人すべてが補償の対象になります。
人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険の違いは、人身傷害補償保険が実際の損害額を補償するのに対して、搭乗者傷害保険は、あらかじめ決められた金額が支払われるというところにあります。
保険金は、「日数払い」や「部位・症状別払い」で支払われます。例えば、入院通院が4日以内なら1日あたり1万円とか、骨折の場合は30万円、胸部の損傷の場合50万円というように定められた金額が支払われます。
支払方法などは、保険会社によって違いがありますので、確認しておきましょう。
搭乗者傷害保険でいくらもらえる?日数払いや部位症状別払いなど金額について
自損事故保険
自損事故保険とは、自分の過失が100%の事故や相手がいない事故を起こした際に、運転者や同乗者などのケガや死亡などを補償する保険です。自損事故保険は、任意保険で自動付帯されるのが一般的です。
自損事故としては、ガードレールにぶつかったり、カーブを曲がりきれず道路脇に転落したりというケースが該当します。
人身傷害補償保険と補償が重なる部分が多いです。人身傷害補償保険に加入する場合、自動付帯されないこともあります。
自損事故保険とは?単独事故の際、自動車保険ではどのように補償されるのか
無保険車傷害保険
無保険車傷害保険も自損事故保険と同様に、自動付帯されるのが一般的です。無保険車傷害保険は、任意保険に加入していない相手と事故を起こした際に、自分の保険から保険金を受け取ることができます。
任意保険に全体の15%は加入していないということですから、無保険車傷害保険があることで、補償を受けることができます。当て逃げといった相手方を特定できない場合でも、補償を受けることができます。
支払われる保険金額は、自分が加入している対人賠償保険の保険金額と同額の場合などいろいろありますが、無制限や2億円としている保険会社が多いです。
無保険車傷害保険(特約)とは?補償の範囲や支払われる金額など
車両保険
自動車保険にはいろいろな補償がありますが、自分の車を補償するのは車両保険だけです。
車が盗まれたり、イタズラされたり、飛び石でフロントガラスが割れたり、台風やゲリラ豪雨などの自然災害(地震や噴火、津波を除く)が発生した際の損害などを補償してくれます。車両保険は保険会社によって補償内容が違いますから、詳細をよく確認しておきましょう。
保険料を安くするために車両保険には加入しないという人もいます。車同士の事故の場合、相手の対物賠償保険で車を修理することもできますが、過失割合によっては、1円も保険金が受け取れないこともあります。
車両保険は免責金額(自己負担する金額)を設定することも可能です。自己負担する金額を決めて、保険料を節約する方が良いと言えるでしょう。
車両保険とは|エコノミー型や一般型など。車両保険の補償内容について
特約で補償を充実させる。ロードサービスを受ける
任意保険の特約で補償をさらに厚くしていく
任意保険には、特約があります。特約を付けることで、保険の補償内容をさらに厚くすることができます。
特約を付けるとその分、保険料も上がりますが、必要に応じて検討していきたいものです。不要な特約であれば、付ける必要はもちろんありません。
主な特約としては次のようなものがあります。
自動車事故によって、相手方と裁判や示談交渉を行う際に、弁護士費用を補償してもらえる特約です。
対物超過修理費用補償特約
修理費用が時価を越えた場合、その差額を限度額まで補償してくれる特約です。
ファミリーバイク特約
自分と家族が所有しているバイク(125cc以下のバイクもしくは原付)で事故が起きたとき、補償してくれる保険です。
個人賠償責任補償特約
日常生活の中で他人にケガをさせたり、他人の物を壊してしまったりして損害賠償責任を負ったとき、賠償金を補償してもらえる特約です。
車内身の回り品特約
車内またはキャリアに積んでいたものが破損したときに補償が受けられる特約です。車内に置いていた食器やキャリアに固定していたスキー板が破損した時や、車上荒らしによる盗難などで補償が受けられるようになります。
自動車保険以外の保険でも似たような補償がありますから、加入の際は補償が重複しないように気を付ける必要があります。
上記以外にも、いろいろな特約がありますから、どういうものがあるのか確認してみるといいでしょう。
任意保険に加入すれば、ロードサービスが付いてくる場合がほとんど
任意保険に加入すると、ロードサービスを利用することができます。ロードサービスではJAFがよく知られていますが、自動車保険のロードサービスもあるので、トラブルが発生した際は、利用できるかどうか一度確認してみるといいでしょう。
主なロードサービスとしては、次のようになっています。
車がガス欠になった時、現場までガソリンを届けてくれるサービスです。
無料レッカーサービス
事故や故障で車が動かなくなった時に、修理工場まで車をレッカー移動してくれるサービスです。
帰宅・宿泊・搬送サービス
現地で復旧できない場合、現場からの帰宅費用などを支払ってくれるサービスです。
緊急対応サービス
バッテリーが上がった時など、30分程度の緊急対応が無料になるサービスです。
キー閉込み時の開錠
対象となる車の中にキーがある時、ドアキーを開錠してくれるサービスです。
例えばレッカー移動の場合、無料の場合とそうでない場合があります。内容をしっかりチェックしておくといいでしょう。
自賠責保険と任意保険のまとめ
自賠責保険はすでにお話したように、補償が限定されています。対人賠償や対物賠償では、3億円という高額な賠償額になることもあります。自分だけではなく家族のことも考えると、万が一に備えて、任意保険に加入した方が良いと言えます。
自分にはどういう補償があるといいのか。特約を含めて検討して、自分に最適な保険をカスタマイズしてみてください。
>>自分の保険料をちょっと確認してみる