兼業主婦(パート・アルバイト勤め)の休業損害はどう扱われるのか?

休業損害とは?どのように算定するのか

パート勤めの主婦の休業損害


交通事故で受傷して仕事を休むことになり、減収を招いた場合の損害を休業損害と言います。

休業損害を計算して、損害額を算定する必要があります。

サラリーマンの場合、勤務先で「休業損害証明書」を出してもらいます。休んだ日数や減額された給与額が記載されています。また、自由業の場合は、事故前年度の確定申告書と診断書の治療日数を基にして、休業損害を計算していきます。

主婦の方の場合も同様に、家事労働ができなくなった分を金銭に換算して、休業損害を算定していきます。

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主婦(家事従事者)の休業損害とは?

家事労働をする主婦(家事従事者)の場合、医師による診断書や通院に関する書類の他に、休業損害証明書や事故前年度の確定申告書のような、休業損害を算定する上での基となる資料はあるのでしょうか。

主婦の場合は、厚生労働省が毎年刊行している「賃金センサス」という統計を基に算定することになります(賃金センサスは正式には「賃金構造基本統計調査」と言います)。

賃金センサスによる女性の平均賃金は、一例として、平成20年と平成26年の場合を見てみると、

平成20年の場合:349万9900円
平成26年の場合:364万1200円


となっています。年度によって異なりますが、だいたい350万円程度の金額となっています。この金額を365日で割って、日収として換算します。

例えば、平成26年の場合だと、

364万1200円÷365日=9975円



となり、およそ1万円が主婦の1日あたりの基礎収入額となります。

兼業主婦(パート・アルバイト)の休業損害

主婦には家事のみをしている専業主婦の他に、仕事をしている兼業主婦の方もいます。

パートやアルバイトをしている主婦の場合、休業損害はどうなるのでしょうか?

賃金センサスの平均賃金よりも実収入が多い場合

実収入が賃金センサスの平均賃金を上回る場合は、給与所得者として休業損害を算出することになります。パートやアルバイトとして働いているというよりも、正社員として働いている方の場合は上回ることが考えられます。

サラリーマンといった給与所得者の場合の例を参考に算定するといいでしょう。

賃金センサスの平均賃金よりも実収入が少ない場合

賃金センサスの平均賃金よりも実収入が下回るケースでは、家事従事者の場合の計算方法に従って、休業損害を算出していきます。

兼業主婦はパートやアルバイトを休んだ分しかもらえない、ということはありません。

例えば、月々8万円程度の収入があった場合、3か月分の平均賃金を24万円とすると、1日の基礎収入額は、

24万円÷90日=2666円



となります。

先ほどの平成26年度の賃金センサスから求めた主婦の1日あたりの基礎収入額は、9975円でした。

パートやアルバイトを休んだ分しかもらえないということになると、仕事も家事もしている主婦が2666円、仕事をしていない専業主婦が9975円となり、不合理な金額となってしまいます。

そこで、兼業主婦の場合は、実収入が賃金センサスの平均賃金よりも少ない場合は、実収入ではなく、賃金センサスの平均賃金を採用するというようにして、不合理な結果とならないように調整しています。

保険会社は大抵の場合、裁判例に基づいた基準よりも少ない額を提示してきます。パートやアルバイトの休業損害だけを支払って済ませようとする傾向がありますから、注意したいものです。

保険会社の提示した内容が十分な賠償なのかどうか、不安に思う場合は、交通事故に詳しい弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

法律的には示談も和解契約の一種です。一度示談が成立すると、決まった金額以上のお金を請求できなくなります。

パートの収入と賃金センサスの平均賃金を足すべきではないのか?

兼業主婦の場合、家事労働とパート(もしくはアルバイト)といった仕事をしているのだから、賃金センサスによる平均賃金とパートでの収入を合計したものが、本来もらうべき収入額なのではないか、という議論もあります。

しかし、この考え方は認められていません。

ただ、個々の家庭事情によっては、賃金センサスの平均賃金よりも高額な金額が認められた判例もあります。

兼業主婦(パート・アルバイト)の休業損害まとめ

休業損害【主婦】パート

パートをしている主婦の方の場合、夫の扶養の範囲内になるように収入を抑えている場合が多いです。賃金センサスの平均賃金よりも実収入が少なくなるケースでは、どのように算定していくのか、保険会社と話をする前に知っておくことが大切です。

保険会社は、自賠責保険の基準である1日5700円を基準にして損害額を提示してくることもありますが、弁護士が介入すると、休業損害請求額が大きくなる場合がほとんどです。

賃金センサスの平均賃金よりも実収入が少ない場合は、賃金センサスの平均賃金で算定するということを自分でしっかりと理解した上で、示談交渉に臨みましょう。


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