家事従事者(専業主婦など)の交通事故|休業損害の日数など、算定のための考え方を解説

家事従事者の休業損害


休業損害とは、交通事故による受傷によって仕事ができなくなり、収入が減ってしまった際の損害のことです。

家事従事者の中でも特に専業主婦の場合、会社から給料をもらっているわけではありませんから、現実的な収入がありません。このような場合、交通事故の休業損害は認められるのでしょうか?

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家事従事者の休業損害はどうなるのか?

結論から言うと、専業主婦といった家事従事者に対しての休業損害は認められています。

サラリーマンや自営業者の場合は、休業損害証明書や前年度の確定申告書を基にして休業損害を請求することになります。しかし、家事従事者の場合は具体的な収入額がありませんから、賃金センサスという厚生労働省による全国賃金統計の女性労働者の平均賃金額を用いて計算していくことになります。

家事従事者とは、性別や年齢を問わず、主婦的労務を行っている人のことを言います。女性ではなく男性の場合もありますから、専業主夫の場合も同様に、休業損害は認められています。

一人暮らしの場合、家事従事者となるのか?

一人暮らしをしている場合、家族にために料理や洗濯、掃除といった家事労働をしているとは言えません。よって、家事従事者には該当しないとされています。

家事従事者の1日あたりの基礎収入の算定の仕方

自賠責基準では1日あたりの基礎収入額は5700円で計算します。しかし、専業主婦は賃金センサスを基準にして休業損害の請求ができますから、賃金センサスを基にして計算していきます。昭和50年7月8日の最高裁判決でも、「主婦の場合、女子労働者の全年齢平均賃金を基礎とすること」と言っています。

家事を金銭的に換算することを、仮に、家事労働のすべてを行う家政婦を雇った場合で考えてみます。平成23年の賃金センサスでは、女性の平均賃金が年収355万9000円となっていますから、家事従事者の年収は360万円程度に相当するとも言えるでしょう。

この平成23年賃金センサスによる女性の平均賃金から1日当たりの基礎収入額を計算すると、

355万9000円÷365日=9751円



となります。年度ごとに若干の違いがあるものの、だいたい1万円くらいが家事従事者の1日あたりの基礎収入額となります。

つまり、1日あたり1万円程度の休業損害を請求できるということになります。

ただし、家事従事者が高齢の場合は、全年齢の平均賃金ではなく、高齢者の平均賃金で算定していくケースもあります。

休業損害の計算方法における3つの基準

一般的に休業損害の計算方法としては、次の3つの基準があります。

自賠責基準
自賠責保険で損害賠償額を算定する際の基準

任意保険基準
保険会社(任意保険)が示談交渉をする際に適用する基準

裁判基準(弁護士基準)
弁護士会の基準。裁判になった際に認められると思われる基準



これらの3つの基準における損害賠償金を比較すると

自賠責基準 < 任意保険基準 < 裁判基準(弁護士基準)



となっており(任意保険基準は公表されていませんが、自賠責基準とほぼ同じと考えられています)、裁判基準が一番高額で、自賠責基準が一番安いです。

保険会社は独自の算定基準を定めています。しかし、裁判で判決が出た際には、基準を超えても保険会社は支払います。

従たる家事従事者の場合

家事従事者は、次の2種類に分類することができます。

  • 自らが主に家事をしている主たる家事従事者
  • 家事を手伝っている従たる家事従事者


従たる家事従事者とは、実母と同居している娘や姑と同居している嫁が該当します。

この場合は、実際に担当している家事の分量を基にしたりしながら、75%、50%を認めるというように算定していきます。結果として、1日当たりの基礎収入額が減額されることになりますから、主たる家事従事者よりも低い金額となります。あくまで個々の事情によりますので、減額割合がいくらなのかは定められていません。

出産など交通事故以外の原因が休業に絡む場合

家事従事者である主婦が交通事故の前後で出産した場合、出産の際には交通事故に関係なく入院しなければならず、家事労働ができなくなると考えられるため、基本的に休業損害は認められていません。

交通事故以外のことが休業の原因として絡んでいると、休業損害額が減額されます。

過去の判例を見ると、28歳の専業主婦が出産が絡んでいたために、休業損害額を減額して算定した例があります(平成15年12月8日東京地裁)。

家事従事者の休業日数の考え方、証明の仕方

休業損害【専業主婦】


休業日数に関しては、休業損害の計算方法【基礎知識】でも述べていますが、入院したり医師から「休養を要する」と診断されたりして、実際に仕事(家事労働)を休んだ日数を休業損害の日数としています。他にも、症状に応じて段階的に休業日数を認めるという考え方もあります。

いずれにしても、基本は医師による診断書や通院に関する書類を基に算定していきます。

専業主婦の場合は特に、会社勤めをしているわけではないので、休業損害を証明する資料を集めにくく、家事にどの程度支障が出ているのかを立証しにくい場合があります。

休業損害の証明で必要となる診断書などをとっておくことが大切ですが、示談で納得できない場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

働いている家事従事者(兼業主婦)の場合

パートやアルバイトなど仕事をしている兼業主婦の場合の休業損害の計算方法については、下記をご覧ください。

icon-arrow-circle-right 【交通事故の休業損害】パートをしている主婦(兼業主婦)の休業損害


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